(5) 鮎川 透さん、風景デザインって何ですか?-記憶をつむぐ

地域を意識しない建築計画はそのプレゼンスに力がなく、建築を意識しない地域づくりはリアリティーが希薄になる。そのような思いを共有して32年前に美川先生や今は亡き岡先生達と事務所を始めた。その頃のスローガンは「一分の一から五万分の一まで」。建築設計事務所と計画事務所とはすみわけしている頃に、「いろんなことするのですね」とたびたび言われたことを思い出す。「情況」という言葉に重ねて「風景」が、社会状況というような意味をもって使われ始めた時代でもあった。
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▽ 執筆者プロフィール
鮎川 透 (建築家)
(株) 環・設計工房 代表取締役、九州大学芸術工学部非常勤講師、風景デザイン研究会幹事など。
1975年に九州芸術工科大学芸術工学専攻科修了後、第一工房に入社、1980年には環・設計工房を設立し、現在に至る。
主な受賞歴は第12回福岡県建築住宅文化賞受賞(大賞)(2000)、北崎地区複合施設新築工事建築設計業務他2件プロポーザル入選(一等)(2002)、日田市総合文化施設(仮称)公募型エスキスコンペ入選(佳作)(2003)など。
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by klda
| 2012-10-03 12:00
| 風景の"め"
(4) 吉田まりえさん、風景デザインって何ですか?-「原価昇華のまちづくり」(造語)を標榜すること

16、7年程前、マーケティングを専門とする方から、公共事業の費用対効果を説明するため独自に考案した「原価昇華」という考え方の話を伺った。話しは、こうだ。川を整備して、新しく遊歩道をつくる。川は、護岸や遊歩道の老朽化に伴い維持管理費が必要になり税金の支出は増える。一方、遊歩道ができたことで、市民が散歩をして健康になれば医療費が下がり税金の支出が減る。「もの」は新しい時に一番価値が高く、その後、価値が下がり続ける一方、そこから新たな行動や変化が起こることで別の「価値」が生み出されるという考え方が「原価昇華」である。今でもこの話を鮮明に覚えているのは、社会人として自分の仕事の意義を考えた最初の出来事だったからだ。
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▽ 執筆者プロフィール
吉田まりえ
九州の暮らし創造研究所 代表。風景デザイン研究会幹事。
97年より九州・山口地域にて都市・地域計画及び公園、道路、公共建築物等をつくる際に市民の意見を反映する市民参加型のプロジェクトに多数関わる。
04年より市民活動団体の支援のため、ボランティアマネジメント、組織運営及び人材育成講座、市民交流イベント等の企画・運営を行う。多様な市民の参加を得て事業を推進するまちづくりワークショップの実践経験をもとに、まちづくりワークショップの企画・運営の考え方、ファシリテーション等の各種手法のノウハウを市民、NPO・ボランティア団体、行政を対象にした研修も手掛ける。
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by klda
| 2012-09-03 09:45
| 風景の"め"
(3) 高尾忠志さん、風景デザインって何ですか?-「喪失」から「希望」へ

山が削られ住宅地がつくられる。水田が造成されて大型ショッピングセンターができる。かつてはそこに未来への希望があったのかもしれない。いや、今でもそこには人が集まり、笑顔がある。しかし、私たちはすでにその限界に気づいている。そこで消費されているものや失われていくものを意識せずにはいられない。そこには誰かが何気なく大切にしてきたものや、必死に守ってきたものがあったのではないだろうか、と心のどこかで感じている。思い出、記憶、伝統。私たちの周りで起こる風景の変化には「喪失感」が漂っている。宇根豊が指摘するように、風景にはこの社会が「何を優先しているのか」があらわれている。私たちは生まれてからこれまで、無意識のうちにそうした社会のふるまいを見せられて育ってきたのだ。
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▽ 執筆者プロフィール
高尾忠志/1977年ロンドン生まれ、千葉県育ち。
九州大学大学院工学研究院建設デザイン部門特任助教。東京大学大学院景観研究室にて篠原修氏・内藤廣氏に師事、株式会社アトリエ74建築都市計画研究所を経て現職。風景デザイン研究会事務局長。
専門は景観計画、都市計画、地域計画、景観デザイン。
主な著書は『景観用語事典増補改訂版』(共著、彰国社)、『風景のとらえ方・つくり方』(共著,共立出版)、『川の百科事典』(共著,丸善)など。主な受賞歴は土木学会デザイン賞2010奨励賞「由布院・湯の坪街道 潤いのある町並みの再生」など。
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by klda
| 2011-12-19 20:38
| 風景の"め"
(2) 樋口明彦さん、風景デザインって何ですか?-「風景デザイン」は批評の文化である

九州に批評の文化をつくりたい。土木をはじめとする公共事業では、景観上望ましくないものが淘汰される仕組みが存在しない。九州の風景をよくしていくには、デザインがまずいもの、考え方がおかしいものなどをきちんとした批評の場に取り上げて、どこがよくないかをしっかりと論じることが必要だと思う。
日本人はなぜかおたがいを批評することが苦手だ。師匠や先生のように立場が上の人からならまだしも、同輩や外部の人から意見されると感情的になってしまいがちだ。しかし、それでは今よりもよい状況は見えてこないのではないか。
以下、樋口が最近目にした事例を槍玉に挙げて「批評」のまねごとをしてみる。
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▽ 執筆者プロフィール
樋口明彦/1958年東京都生まれ。
九州大学大学院工学研究科都市環境システム工学専攻准教授。風景デザイン研究会幹事長。
専門はアーバンデザイン、まちづくり(都市計画)、景観工学。
主な著書は『風景のとらえ方・つくり方』(共著,共立出版)、『川づくりをまちづくりに』(共著,福岡県建設技術情報センター)、『都市の記憶:場所体験による景観デザインの手法Tony Hiss, The Experience of Place, Knopf, 1990』(共訳 井上書院)など。主な受賞歴は土木学会デザイン賞2009最優秀賞「遠賀川 直方の水辺」など。
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by klda
| 2011-11-28 12:10
| 風景の"め"
(1) 小林一郎さん、風景デザインって何ですか? - 一所から懸命に

1)京城
母は大正の後半、ソウルの繁華街である黄金町で生まれ、二十歳過ぎまで、そこで暮らした。冬には、大河・漢江が凍りスケートができたらしい。風の強い日は、手を大きく広げるだけで、滑って行けたという。今でも半信半疑だが、豊かな少女時代を楽しく語る様子から、再訪できない町への強烈な望郷の念を感じた。幾度も繰り返される話を聞くだけで、私は風景の一部を共有しているような気になった。今も母の原風景は私の中にある。
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▽ 執筆者プロフィール
小林一郎/1951年大分県生まれ。
熊本大学大学院自然科学研究科教授、風景デザイン研究会会長。
Ecole Centrale de Lyon(フランス)固体力学教室訪問研究員を経て現職。
専門は設計論、景観工学、土木史。
主な著書は『風景のとらえ方・つくり方』(共著,共立出版)、『風景の中の橋』(槇書房)、『景観と意匠の歴史的展開-土木構造物・都市・ランドスケープ-』(共著,信山社セイテック)など。
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by klda
| 2011-09-28 12:14
| 風景の"め"